光化学のイントロ

 「光化学」という分野はあまり馴染みがないかもしれませんが、我々の日常では普通に見られる物です。例えば光合成、オゾン層破壊、日焼けなども全て光が関係しているものです。非常に身近な物で言えば洗濯洗剤があります。成分表示を見てみると「蛍光増白剤」と書かれていると思います。これは洗濯物を白く見せるために入っている青白い蛍光を発する薬品です。紫外線(ブラックライトなどが簡便です)を受けるとこの薬品が蛍光を発し、青白く光るために洗濯物が白く見えるのです。
 さて、光はエネルギーの塊ですから、分子が光を吸収すれば非常に高い内部エネルギーを得ることになります。当然不安定ですから何らかの形でエネルギーを放出、あるいは反応に使って安定になろうとします。その一つが「蛍光」であったり、「内部変換-振動緩和」、「系間交差-振動緩和」と呼ばれる過程であったり、化学反応であったりします。
 この過程を図に示したのがJablonskiダイアグラムと呼ばれるもので教科書などにはよく出てきます(右図)。
 本講座でご紹介する話題は通常の光化学の教科書にはまだ載ってないものです。(強光子場と分子との相互作用)では「光吸収」という赤矢印、(光で超高温分子を創世する)では「内部変換」という赤波線矢印の部分に相当しますが、いずれも従来の光化学の常識とは異なるものです。

Please click me!
光化学の特徴
 光化学反応はよく熱化学反応と対比されますが、、それぞれ利点があります。熱化学反応に対して光化学反応は時間分解能、空間分解能、エネルギーの選択・分布幅、選択性、反応温度の自由度のいずれの条件も優位にたっています。しかしながら、コストの面から工業的にはさかんではないようです。
 一方、レーザーを用いた反応はレーザーの特徴(超短パルス、超高輝度、単色性、位相、、、)を最大限に生かした物:レーザーでしか出来ない事であればコストの面はともかく実用化されています。例えばレーザーメスや角膜の手術装置、レーザーによる加工装置です。前者は有名ですが、後者も既にフェムト秒レーザーによる加工装置が実用化され、販売されています。

 光化学そのものについてはかなりの数の教科書が出ていますので、それらを参照していただければ幸いです。

 ・井上、高木、佐々木、朴、「光化学I」、丸善、1999、3200円+税

 ・井上、「量子化学I」丸善、1996、2900円+税

おまけ
ちなみに、光化学、量子化学に関係したノーベル化学賞としては
1999年度 Ahmed H. Zewail
 化学反応の遷移状態をめぐるフェムト秒分光学を用いた研究(link)
1998年度 Walter Kohn, John A. Pople
 密度汎関数法の発展、量子化学での計算科学的方法の開発(link)
1995年度 Paul Crutzen, Mario Molina, F. Sherwood Rowland
 環境化学、オゾンの生成と分解(link)
1992年度 Rudolph A. Marcus
 電子移動の理論的研究(link)
1981年度 Kenichi Fukui 福井謙一
 フロンティア軌道理論(link)
1967年度 Ronald George Wreyford Norrish, Lord George Porter
 閃光分解分光法の開発(link)
などがあります。

←戻る